鹿革の特徴

鹿革は、現代こそ牛革に比べてあまりなじみはありませんが、皮革の中でも最も古くから親しまれて参りました。

刀剣の鞘や日本最古の足袋など、飛鳥時代から江戸時代にいたるまで、鹿革を使った武具が多数発見されています。

日本において牛革を使うようになるのは比較的後世のことで、日本では「革」といえば鹿革という時代の方が長く続きました。

鹿は他の動物に比べ皮の繊維が非常に細く、直径15mmの管に1千万本も入る細さです。

この超極細繊維がより集まって1本の繊維束となり、その繊維束が密に織り重なった構造をしています。

この構造が、数々の優れた特性を生んでいます。

通気性、吸湿性が高いことはもちろん、細い繊維の束がしっかりと絡み合っているため、他の皮革と比べ、耐久性が高く柔軟性を長期間キープすることができます。

このため、肌触りが非常に良く、しかも、型崩れしにくいことが特徴です。

たとえば、牛革なら適切な手入れをしないと数年から十年ほどで固くなってしまいますが、鹿革は長期間に亘ってしなやかさを保ちつづけ、色褪せもあまりしません。

その証拠が東大寺正倉院の鹿革製の品。これらの中には千年以上の時を経てなお柔軟性を失わず、新鮮な色彩を保つものがみられるそうです。

また、一般に革製品は布製品に比べ重くなりがちですが、鹿革製品はとても軽く、肌身に着けていても疲れません。

このような鹿革の素晴らしさを、ぜひ肌で実感していただければ幸いです。